Fri - March 12, 2004

舞城王太郎「九十九十九(ツクモジュウク)」


清涼院流水のJDCシリーズに登場する「美しさで人を失神させる超絶メタ探偵・九十九十九」を主役にすえたトリビュート。「彩紋家事件」のイキオイで買ってあったのを、諸用で九州に出掛ける飛行機の中で読みましたよ。

生まれた瞬間から描かれていますけど、いきなり「生まれた感動のあまり歌うと抱えていた看護婦と医者が失神して、臍の緒で15分くらい宙づりになった」という素敵すぎる描写があります。まずコレで引き込まれる(笑)。最初の200ページくらいを読んでるうちは「なにもこんなにセクシャルな描写を多用せんでもいいだろうに…」とか思ったんですけどね、(それでも¥1,500もする本をせっかく買ったんだし、擬音のセンスは抜群に光ってるなぁ!とか思って)しばらく読んでいって構造が見えてくるとなんとも面白くなってきます。

メタ・ミステリはどうも苦手だなぁ、とか思ってたのは、やっぱり出会いの作品がよろしくなかった、て事で。
それにしてもこの小説の構造はすごい事になってます。最後の方に行くに従って、どんどん頭がこんがらかって行くハメに。メタは基本的に嫌!とか思ってても竹本健治匣の中の失楽」を読んでた時と同じ感覚の面白さを感じられるようになったので、良しですよ(補足して言うと、メタ構造とは言っても、つくりが全然違いますよ)。

JDCでおなじみの面々も多数登場。コズミックジョーカーのように清涼院流水も登場して大変な目に遭ったり遭わなかったり。読み手としての度量が計られてしまう作品ではありますし、JDCとの関連で考えていくと非常に複雑な気分にならざるを得ない(自分が予測していた内容とは離れてたしね!)けれど、マイファースト舞城王太郎、って事で、読んだ価値はあったと思いますよ。

言葉遊び的な要素も山ほど、構造は混乱していく一方、だけど擬音のセンスがめちゃめちゃ光ってるのと、息をのむクライマックス、そして(個人的に)すごく気に入った最後の一文。まずストーリーありき、で文章的な事をほとんど評価できないオイラにさえ気に入った文がある、てのはすごい事ですって。

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