Tue - May 4, 2004

松尾由美「銀杏坂」


初めて読む作家さんです。駅の売店で後ろの粗筋に目を通した所、丁度今読みたい「殺人のない短編連作集」という条件に当てはまっていそうだったので手を出してみたのです。不思議で面白い作品でした…満足!

裏表紙の粗筋を読むと「ひとりの幽霊が住み着いているアパートの一室でダイヤのブローチの盗難事件が発生、容疑者は全員シロ。二人の刑事は幽霊に事情聴取をすることになるが…」と。
…!?不思議というか、幽霊が出て来たら密室もヘッタクレもなくなっちゃうじゃんよぅ!と思うけれど、その辺はきちんと、アンフェアな事はしてないですよ。確かに幽霊を始め、超常現象は各編に登場するんですが、それが事件の本質に関わる事で非常識な事件になる、という事もなく。そういう世界でのミステリ、と考える事ができてさえしまえば、後は何の問題もなく、普段読んでるのと同じように読めるのです。不思議な現象は起きているけど、事件そのものに不思議はなく。

で、出来の良い短編連作集を読むと毎回思う事なんですが、一編ずつが読み手を引き込みつつ、全体を通しての謎というのがあって、それも明らかになっていく…そこで明らかにされた事はネタバレになるんで当然避けますけど、裏表紙にあった通り切ないねぇ。宮部みゆき作品でたまにある「やるせなさ」に通じる切なさではなく、空虚感のある切なさ、という感じ。

作品数がまだ少ないようなので、追いかけるなら今の内…!と思いましたよ。

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