Tue - May 11, 2004

原リョウ「そして夜は甦る」


先日の合宿でM氏のオススメのあった作品を読んでみました。88年の作品と言う事で時代の小道具こそ違うものの、今では珍しいまでの硬派なハードボイルド。読みながらフィリップ・マーロウを頭に浮かべてました。

完全に後追いで読んでいるからこそ発生してしまう現代とのギャップ。大きなものと言えば

・かろうじて業務用の自動車電話が存在する位で、留守番電話さえそれほど普及していないため「電話秘書応答サービス」の占める位置が大きい(けれど、この存在が話のキーポイントに関わって来てます)
・JRじゃなくて「国電」なのだけど、使う言葉が違うだけで、「都会」の印象そのものが別物に。今となっては都会は大人のものではなくなってしまっているからなぁ。

…と言う感じ。読みながら何度も「これは15年前の作品だ…」と自分に言い聞かせる必要があったのは、フィクションならではの設定が味付けとして深い所にあるとは言え、リアルな現代を予見したかのような人物設定。映画俳優と小説家の兄弟、小説家の方は都知事になっているって…!?ビックリだ。他の登場人物や背景も、現代に通用するリアリティ。

ストーリー最優先のハナオカとしては、導入部のミステリアスさ、二転三転する事件の姿、とても15年も前の作品とは思えないほど引き込むものでしたよ。残念ながら寡作な作家さんらしいのですが、全作品読んでみようと思います。古典ハードボイルド作品が持つ言い回しの妙、世界の描き方、不器用に真実を追いかける探偵の姿、どこを取っても「良い作品に時代は関係ない」んだなぁ、と改めて思う作品でした。

#作者の名前「リョウ」の字は、「寮」からウカンムリを外したもの。

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