Tue - January 30, 2007

ブルボン小林「ぐっとくる題名」


週刊ファミ通で「ブルボン小林のゲームソムリエ」を連載中の氏のコラム新刊、誌面で紹介されていたもののしばらく店頭で(中公新書ラクレごと)見つけられなかったのですが、ようやく発見、非常に楽しく読めましたよ。

同じく週刊ファミ通の新作新刊情報コーナーで紹介されていた「芥川賞受賞作家が書いたゲームコラム『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』」に興味を持ったのが知るきっかけでしたかね。時系列は正確に覚えてませんが、これを読んだ直後にファミ通での連載が始まったような気がします。

そしてこの「ぐっとくる題名」(AA)。この題名が既に「ぐっとくる」訳ですが、前書きにある

    >  こういう題名の新書を手に取ったということは、もしかしてあなたは普段からなにかに題
    > 名をつける仕事をしているか、近い将来、なにかに「題名をつける」必要があって、目下悩
    > んでいるところなのではないでしょうか。

という一説を読んで、また奥様がこの箇所を読んで「そう言えば題名つけるお仕事してるんだねぇ」と再認識した次第。そう、曲名。滅多に自分で曲名をつける事はないし(自分で曲名つけたのはモンスターファームのサントラCDが発売された時と、去年のとらのあなコンピCDのみ!!)、つける時は毎回作曲しているのと同等がそれ以上に悩むのです(かかってる実時間はもちろん曲名付ける時の方が短いんだけど)。

この本の中では、小説や映画、ゲーム、マンガ、音楽etc...の印象的なタイトルについて「言葉と言葉の距離(二物衝撃)」「題名自体が物語である」「先入観から逸脱する」…のように、ロジックとマインド(言い換えるなら、左脳と右脳)的観点から、この題名の何が/どこが/何故、心にフックするのかを繙いています。
あたしゃ一応ミュージシャンなもんで「韻とリズム」位は気にしてるし、本文中でも触れられている「ディグダグ」がゲームの動作とその動詞の活用形から作られる妙味となって印象深くなっている…位は意識をしていましたが、それ以外はほとんど感覚的なものしかありませんでした。

題名そのものにスポットライトを浴びせ、かつロジカルに解析して行く…というのはブルボン氏の「ぱっと見はおちゃらけた文章だけれど、その展開には明らかな論理性・数学的美しさが見えている」既刊の「ジュ・ゲーム〜」やファミ通連載を読む時にいつも感じている魅力です(僕は文系/理系という分類があまり好きではないんですが、敢えて使って考えてみると、あくまで文系的テーマや印象・表現を理系的手法によって分解していく…という構成が非常に好きなようで。裏返しに理系的指向プロセスを文系的修辞法で語る森博嗣作品や、文系的テーマを文系的手法によって理系的構造で語ったり解いたりする京極夏彦作品が好みだ、という理由にもこのエントリ書きながら自分で気がついた)。


せっかくなので、去年作った「雪華踊翔」という曲名を、この本に載っていた技法をもって分解してみる。

・まず作曲時のテーマとして「冬」が挙げられていて、雪が夜中に舞っている情景を想定していた。
・曲調からロボットものを連想するせいか、二つ名でよくある「漢字四文字」フォーマットが良いと思った。
・字面だけでなく、口に出して読んだ時のリズム感の良さを重視したい。

…な感じで散々頭を悩ませた挙句「せつかとうしょう」と言う造語を曲名として付けた訳ですが、「韻とリズム」「題名自体が物語である」というテクニックが使われておりました。この本の中で章題となっているものは二つだけであまり当てはまっていないんですが、個人的には非常にぐっと来ているんだけどなぁ…何故でしょう(単なるオイラの分析不足)。


この本を読んでみると、これまで苦手意識ばかりが先行していた「題名をつける」事に面白みを感じられるようになった、と言う点では充分実用書なんですが、題名をつける事に縁がなくても、純粋に読み物として非常に楽しめるんじゃないかと思ってます。現に奥様は興味を示して、このエントリを書いている横でちょこちょこ読んでおりました。

そう言えば、Bookカテゴリでエントリ起こすのは2年近くぶりだ…!本は読んでたんだけどなぁ…。

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