Wed - August 6, 2003

ジャンキーの幸せ3


いろいろと本を読んで行くと「流れ」的なものはあって当然な訳です。特に同傾向のものだと出版社の思惑とか、作家活動がアクティブな時期とか、別段不思議はない...はずなのに、どうもシンクロニシティ?と感じる事もあったりするエピソードを1mmくらい含む、そんな本バナシ。

望月三起也ワイルド7」11,12巻
文庫版には収録されなかった、合計2000ページにも及ぶ最終エピソード「魔像の十字路」を15年ぶりに収録。これにて完結。全12巻揃えた特典の小冊子の応募しなきゃなー。この次にはケネディ騎士団アメリカ編新ワイルド7復刊キボン。「飛葉」の2巻はいつになる事やら...。あ、こないだ古本屋で発見、大分プレミアついてましたが現物を目にして「マシンハヤブサ」(DVD-BOX欲しいかも...)「夜明けのマッキー」の単行本も一気にゲット!駄目ですブレーキの効きが甘過ぎます!...秘密探偵JAはどこにあるー(ぉ

怪談之怪・編「怪談之怪之怪談
京極夏彦木原浩勝、中川市朗東雅夫が「怪談を聞き、語り、愉しむ」ことを目的として結成した「怪談之怪」の対談集。ゲストは春風亭小朝中島らも山岸涼子佐野史郎山田誠二岩井志麻子露の五郎高橋克彦佐伯日菜子。このゲストを見て「お、流石の人選だなぁ」と思った時点でかなり却(業)が深い(w 第一に京極夏彦に惹かれて買ったくらいなんで「新耳袋」はノーチェックだったんですけど(どっちかてーと本家「耳袋」の方が馴染みが深い位なもんで)、かなり読みごたえのある本でしたよ。ホラーとは違う、日本独特の怪談。最近日本のホラーが世界的な評価を受け始めてるけど、さらにその根っこにあるのは、この本でも度々触れられてる日本の怪談独特の湿度。その魅力を再確認するには充分でした。...後で本棚調べて発覚したんだけど、東雅夫は学研「クトゥルー神話辞典」のアンソロジストだったぁ!
意外に知られてないと思うのが佐野史郎とホラーの関わり。たぶん、一般的にはマザコンの冬彦さんなんだろうけど、「京極夏彦 怪」では百介役してるし、ラヴクラフトへの思い入れを公言した上で「曇天の穴」って神話モノ(学研「クトゥルー怪異録」所収)を書いてたりするので、TVドラマを見ないオイラにとっては役者って意識よりホラー系の人、て意識の方が強かったり。一般的じゃないですな。

東雅夫・編「ホラー・ジャパネスクを語る
先の本で東雅夫、て名前を頭に刻み込んで翌日本屋さんをチェックしたら見つけた。これも対談集。ゲストは宮部みゆき津原泰水津原やすみ)、岩井志麻子福澤徹三加門七海京極夏彦。こっちは作家オンリーの対談集。ここ10年くらいかけて一大ジャンルとなった、日本固有のじっとりとした風土をベースに持っているホラーを「ホラー・ジャパネスク」と称して基盤や背景を探る事を主眼に...出るわ出るわ、いろんな話。回りから見るといわゆる霊感を持ってるのに本人はそう自覚していない、逆に持っていないからこそ細部まで書ける、完全なフィクションなのに実話だと思わせる...などなど。本格的な怪談の成立時期が江戸時代という事で歴史的な言及や、まったく反対に海外ホラー(キングクーンツラヴクラフト、etc...)からの影響、現代の都市伝説と妖怪、怪談奇談との差、などなど。先の「怪談之怪之怪談」が楽しく面白いのに対して、こちらは興味深く面白い、と。超常現象のハナシは好きだけど、肯定もしなければ否定もしない(どっちかっつーと否定より...?)方が多いのはやはりと言うか意外と言うか。これを読んだ事で興味を持った作家、作品はこれから少し気にしてみようかな、と。

倉知淳過ぎ行く風はみどり色
最近は代表作として取り上げられてる事が多いこの作品です。文庫化されていたので(ちょい遅いけど)読みましたよ。作家買いの時には、いつもあらすじをまったくチェックしない、て事にご留意。...んで、このところ日本の怪談的な本を読むのが多かったのに対して、普通に好きな作家のミステリ、てつもりで買ったはずなのに...なんだか幽霊の話が出て来て「あれー、そんなつもりはなかったのに、これってシンクロニシティ?(w」とか思ってたら、次の章はいきなりそのものズバリ「シンクロニシティ」の説明(驚。超常現象からは二歩くらい距離を置いてるオイラだけど、言葉で説明できない不思議な事はあるもんだなあ、と。そもそもユング話なんて10年位前に一度脚本のネタにして、それからは気にする事もなく、意識する事もなく...だったのに頭にその言葉が浮かんだ途端にアレヨアレヨと。...ま、この本題には微塵も関係ない話なんだけど。

この作品はホントに良いものでした。猫丸先輩は途中は少し顔を出すだけで、解決編までほとんど脇役(より影が薄い)くらいで、決してキャラ萌えではない。で、いつもの如く貼りまくられた伏線が思いもよらない形で収束していく快感。ネタは割れた上で始めから再読したくなる、てのは良作の証拠。プラス非常に爽やかな読後感。「過ぎ行く風はみどり色」てタイトルにまさに相応しい作品でございます。

岩井志麻子ぼっけえ、きょうてえ
ホラー新開拓の第一弾。唯一上の二冊ともに登場している岩井志麻子の、最も言及されている作品。恥ずかしながら、これまで完全にノーチェックだったんですが(しばらくホラーから離れてたんで...)、それでも名前だけは覚えてた作品。パっと見で意味のわからないタイトルは、やはり記憶に残ります。岡山弁で「とても、こわい」と言う意味だそうで...。岡山弁で当たり前の事のように語られて行く話、何の前触れもなく語られる民俗的因習を表す用語、ざらざらとした独特の手触りの世界、湿った匂い...それに引き込まれていくうちに、救い...いや、逃げ場のない錯覚に捕われる。表題作の「ぼっけえ、きょうてえ」はまだ分かりやすい部類で、他の作品は読み手の想像力があるかないかで怖さが全然変わってきそう。読んだのが行き帰りの電車の中で本当に良かった、と思った(青ざめ)。

倉田英之R.O.D 第八巻」
そういえば六巻ラストのヒキが結構気になる状況で七巻はサイドストーリー。つまり結構待ってた訳ですな。本好きが喜ぶ要素は今回は少なめ。で、一気に話が展開してキマシター!グーテンベルク・ペーパーって?とかジェントルメンと読仙社の因縁?とか、解き明かされてきてます。時間軸と主要キャラが別(共通してんの、ねねね位?この眼鏡をかけてる、て事は...?)のTVアニメも秋から始まる、て事で、一気に収束していくのかしらん?

デヴィッド・モーガン「モンティ・パイソン・スピークス!
訳者の須田泰成がだいぶ前に書いた「モンティ・パイソン大全」は当然読んだ訳で、そっちは全エピソードの解説ほかガイドブック的役割に徹して(いえそれだけで充分モノスゴイ情報量なのです)た訳ですが、こちらは関係者に対するインタビューや放送局内での立場や処遇、映画の成功が及ぼした影響、メンバー内の人間関係などなど、役者、コメディ作家としてのパイソンズの面々をより深く知るには最適の一冊。というか、これを面白いと思うか思わないかでパイソニアンの尺度が量れるかと。

Categories
Total entries:

Archives
rss