Thu - August 21, 2003

恩田陸「象と耳鳴り」


倉知淳を追っかけている時に、同じ出版社の棚でタイトルに惹かれて手に取ってみたら本格推理の短編集、ちょうど今は長編よりは短編を読みたいよなー、と思って。読み終えた後に最後の解説を読んでみたら、最初の出会いとしてはどうも大当たりだったらしい。

恩田陸の名前は以前からいろんな所(友人のサイトとか、キャンペーンの帯、読んだ対談集とか)で目にしていたけれど、じゃあ実際に読んでみよう、という流れに恵まれていなかったのですな。著者略歴を見て驚いた。おぉ、アノ「六番目の小夜子」がデビュー作なのか!? タイトルだけは某理由で縁が深い(未読&TV版も未見)。

最初の数作はまだ慣れてなくて、しかも主人公が一緒って事にも気付かなくて(2作目、最後まで名前が出てなかったからんねー)いたんだけど、2作目「新・D坂の殺人」でちょいとビックリ。団子坂じゃなくて、渋谷D坂ぁ!?それでだんだん引っかかって、一気に読み通したんだけど...すごいよ。帯に「ミステリ界”奇跡"の一冊」てあったのは伊達じゃない。
短編なだけに一作ずつのテンポが良い、てのは当然なのかも知れないけど、普段読んでるミステリだと割と早くのウチに謎が提示されて云々、てのに対して、最後まで何かが起こってる様子がないのにそれまで読んでた部分の何気ない動作を解釈するとこんな事件が起こってた!とか、一般的な生活をグラグラ根底から揺さぶるような感じ。

伏線が収束して行く切れ味がすごく鋭い、その鋭さってのは京極夏彦倉知淳で知った快楽だけど、もしかしたらそれ以上かも知れない。さらにその上に、日常の謎が、という点では北村薫的な世界を感じる。オイラ的には大絶賛。なんだけど、読後感がジョナサン・キャロル(笑...だけど最近新刊を見かけないなぁ)。話はちゃんと解決してるのに、その後に残る非常にダークな...暗くて深い穴の淵に立って底を覗き込んでるような感じ。こんな同居ができるんだ?とか思った。ミステリ中心に、しばらく追っかけてみようと思うのです。

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