Sat - September 20, 2003

森博嗣「封印サイトは詩的私的手記」


「I Say Essay Everyday」シリーズは過去の1年分(今回は1999年、この頃はまだ森ミステリには出逢ってなかった)の近況報告をまとめたもの...て事は分量も1年分ある訳で、誌面にする際に膨大な脚注もついて読みごたえ充分。ようやく読了!

表紙イラストと中のコミックは古谷兎丸氏。水彩塗りとシャープな線が素敵。こういう傾向ばかりではないけど、森氏が好むイラストの傾向、やっとなんとか分かってきたような気がするです。オイラにゃそれを言葉にする能力はありませんけど。

内容は、これまで読んで来た「すべてがEになる」「毎日は笑わない工学博士たち」と同様、日々をつづる中の視点と意見を、面白がるか納得するか意外に思って新しい視点を手に入れるか、必ずどれかに当てはまる感じ。これが快感で読む訳なんですけど、前書きでいきなり「この本を手に取った時点で、平均的でない」とバッサリ言われてしまいます(笑 曰く、こんな分厚い本を手に取るだけで末期症状だ、とか(絡新婦の理を読んでるくらいだから、避けるほど厚いとは思わないんだけど、ページ当たりの情報量は小説の比じゃないので、言えてるのかも)、自分で稼いだお金と交換してまで入手したなんて信じられない、とか(いーえむしろ生活に必要なお金以外は面白い本を読むために稼いでいるのだ!と言いきれるしなぁ)、とにかく「これは読んではいけない本なのだ」と主張する事しきり、の前書き。

たしかに読んではいけない本かも知れない。日記である以上、テーマの掘り下げが前提になっている浮遊研究室ほどじゃないにせよ、思考実験の面白さだとか、自分の視点がいかに少ない方向からに限られていたかとか、脳が興奮する面白さを一度知っちゃったら、もう生半可の本じゃ満足できなくなるからねー。

平均的である事には果たして価値があるんだろうか?ソレに答えを出せば、退屈なんて言葉とは縁がなくなるはず。

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